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Motoyuki's Resilience Life

レジリエンスを高めるためにIT・介護・人材育成などジャンル問わず考えを綴る佐々木基之のブログ

【介護のおしごと #003】経験だけに依存しない"データを活かした支援"の形を創りたい(S・Tさん)

介護をお仕事にしている方のリアルな声を不定期で発信する『介護のおしごと』。

第3回は社会福祉士として働くS・Tさん(男性)です。

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Tさんとは福祉系のセミナーで知り合ったのですが、お会いした時に衝撃を受けました。というのも、なんと僕と出身大学が同じだったんです。まさか福祉系のイベントで大学OBに出会うとは思っておらず、是非お話したい!ということで今回のインタビューが実現しました。

(以下、イニシャル)

 

企業の中で自分の立ち位置を見出せなくなってしまった

Tさんは福岡にある施設で約1年半、社会福祉士として働いていらっしゃいます。

佐々木「初めてお会いしたときから1度ゆっくりお話ししたいと思っていたので、今日は本当に嬉しいです。早速なんですが、元々は情報系の企業で働いていらっしゃったんですよね?」

T「そうなんです。電機メーカーで6年ほど働いていました。」

佐々木「IT系、理系の業界から福祉業界にシフトチェンジする方はなかなかいらっしゃらないと思うんですが、きっかけはなんだったんですか?」

T「確かになかなかいないですね。きっかけというか、疑問を持ち始めたといった方が適しているかもしれないけど、企業の中で自分の立ち位置を見出せなくなったんです。」

Tさんは情報系大学を卒業後、電機メーカーでシステム保守などの業務に携わっていたそうです。Tさんにとってやりがいとは人の喜びを創ること。電機メーカーに就職を決めたのは、自分が携わった製品を通してやりがいを感じることができるという想いからでした。ただ、保守業務はお客さん(消費者)と対面する機会がほとんどないことや企業活動を客観的に見ると携わっている仕事が本当に局所的であるなど、様々な要因から自分はこのままでいいのか?と悩み始めたそうです。

 

ちょっと動きを変えれば笑顔や喜びを創ることができる

悩んでても仕方ないと思ったTさんはとある行動を起こします。

T「悩んでても仕方ないなと思って、ボランティアを始めたんです。」

職場の中にいる機会が多くなっていたTさんは、もっと外に出て、もっと人と関わりたいと考えボランティアを始めます。そのボランティアとは病院内に設けられてる特別支援学校に通う児童の勉強を教えるというものでした。実はこのボランティア、病院側から募集があったものではなく、Tさん自らがやらせてくださいと志願したものだったんです。

家庭教師のアルバイト経験から勉強を教えることは難しくはなかったそうですが、とある壁がTさんの前に立ちはだかります。

T「病院内にある学校なので、病院を退院すれば児童は一般の学校に戻ります。でも、一般の学校は授業が進んでいるので、折角戻っても勉強についていけない。入退院を繰り返すと遅れはみるみる大きくなります。そのような状況に置かれた高校受験生が5名もいたんです。」

高校に行きたいと強く願う5名のために何とか力になりたい。Tさんは学力対策だけしていても他の受験生には負けてしまうと考え、面接対策や志願書の添削などを重点的に実施したそうです。結果はなんと5名全員合格

T「本当に嬉しくて、合格した本人達より僕が一番喜んでました(笑)。でも、思ったんです。ちょっと動きや取り組むことを変えればこんなにも笑顔や喜びを創れるんだって。今思えば本当に行動力があったように思います。」

 

学校説明会に参加して即入学を決意。社会福祉士の資格を取得。

佐々木「本当にすごい行動力ですね。なかなかできることじゃないと思います。」

T「かれこれ3年ほどボランティアをしてました。ボランティアを通して、福祉を"仕事"としてやってきたいなと思ったんです。"福祉=介護"だったんですが、いろいろ調べると社会福祉士という資格があることを知って。そしたらたまたま社会福祉士を目指す学校の説明会が週末に開催されるということだったんで、参加して即入学を決めたんです。」

即入学を決めたTさんは勤めていた会社を辞め、1年間の勉強の末、社会福祉士の資格を取得なさいます。

T「あの時は本当に必死でした。6畳一間に引っ越して、家具は机だけ。テレビも車も売って禁酒もしてたんです。とにかく1年で社会福祉士になるってそれだけでした。人間本気になるといろいろできちゃいますね。」

佐々木「本当にすべてが行動で完結してて凄いの一言です。この2年間で様々なことが目まぐるしく、一気に駆け抜けていった感じなんですね!」

 

職業指導員を通して、就職は入口に過ぎないことを学んだ

社会福祉士の資格を取得したTさんは、現在の職場に就職し、発達障がいの方の職業指導員としての経験を積んでいらっしゃいます。

佐々木「IT業界にいたからこそ感じるギャップとかってありますか?」

T「もちろんありますよ。課題の部分は後でお話するので、先に感動した話から。IT業界にいるとコミュニケーションって非常に簡素じゃないですか?必要な情報を簡潔に話すことが求められるので余計に。もちろん簡潔なコミュニケーションは必要なんですが、簡潔なコミュニケーションに慣れすぎてたせいもあり、何気ない会話に感動するんです。」

働き始めてすぐの頃、まだ発達障がいの方に身構えてしまっていたそうです。でも、そのような時に限って利用者さんから声をかけてくれるそうです。対面することで発する雰囲気をすっと感じ取り、汲み取り声をかけてくれる。そんな何気ない会話に感動するとTさんはとても活き活きとしながら教えてくださいました。

T「では課題の部分。職業指導員なので、利用者さんが就職できるようにというゴールは明確なんです。ただ、就職は入口に過ぎないと学んだんです。利用者さんにとっては働き続けること、1年2年と継続することが大事なんだと。」

Tさんは就職後のケアの部分に課題を感じており、利用者の方が就職後も安心して働き続ける仕組みを利用者、支援者、企業の三者間でコミュニケーションを図りながら創っていきたいと話してくれました。

 

経験だけに依存しない、データを活用した支援の形を創っていきたい

T「実は目指している形があるんです。それは、データの管理・分析、支援システムの開発もできる支援者です。各事業所で利用者さんへの支援内容など様々なデータを管理しているんですが、実際はあまり上手くデータを活用しきれてないと感じてます。例えばデータを可視化することができれば、利用者さんへわかりやすいフィードバックをすることに繋がります。もちろん、職員間の連携も取りやすくなると思いますし、業務効率も上がるかなと。学生時代、前職を通してシステム開発の経験もあるのでチャレンジしていきたいですね。理想を言えば事業所に1SEです!やっぱり支援の形はこれでいいってものはないですし、利用者さん、事業所ごとに変わっていくものなので理想は1事業所に1SEだなあって(笑)」

人と人が直接関わりながら進む仕事であるが故に、人の経験値ってとても重要だと思います。ただ、経験値に頼り過ぎると全体で共有できなかったりという問題も出てきます。データはあくまでデータに過ぎませんが、使い方によって効率が上がったり、改善に繋がったりもします。Tさんの言うように、折角支援内容をデータとして管理しているならば、データを活用した支援の在り方も必要だと感じずにはいられません。

ただ注意しないといけないことは、人と人が関わる部分が機械化してはいけないという点だと思います。

データ活用はあくまで手段です。何事も適材適所、役割分担です。

T理系出身だからこそ、いい意味で福祉業界の暗黙ルールに染まらなくていいかなと思っています。アナログな業界だからアナログになる必要はなくて、自分が考えた事、思った事は積極的に外に出そうと思っています。それがある意味、理系分野から来た自分にできることなのかなって。自分のことを話す機会なかったのでついつい喋りすぎましたね(笑)」

佐々木「いえ、まったく問題ないです。むしろ理系から見た福祉福祉の中で考える理系な部分を感じることができて、僕自身非常に勉強になりました。今日はありがとうございました!」

 

Tさんが最後に話してくれたことに大きく共感するのですが、福祉福祉、ITはITとドメインを区切っているままでは何かが劇的に変わることはないと思っています。

2025年問題と言われているように、今後高齢者人口が増えること、そして福祉に携わる人口が減ることは避けられないと思います。現在のやり方のままでは人手不足問題は解決に向かうことは難しいと思います。

現在のやり方を疑ってかかる。

現在のやり方を疑うには、内に居ながらも可能ではありますが、外からの視点・意見が有益になってくると思います。残り10年となった今からだからこそ、IT業界を始め、様々な業界と福祉業界が連携していくことで"今のやり方"を改善していけると思っています。

 

このブログでは引き続き、介護従事者の方にインタビューを実施し、介護の仕事のリアルな部分を発信できればと考えています。

介護について考えるきっかけになれるように。